保育園のリトミック―コロナ禍期間の取り組み

新型コロナ感染症による緊急事態宣言が始まって以来、月に1回のペースで指導に行く保育園では、外部講師による直接指導はできないために、リモートで子ども達へのリトミックを継続しています。

といっても、私が直接画面の中からピアノを弾き声掛けするというスタイルではなく、私が作成した指導案をもとに、保育士の先生方が直接子ども達と一緒に動き、活動を進めています。

 

私が指導に伺うようになってから約20年、その間先生方の入れ替わりはありましたが、今ではベテランの先生も多く、リトミックを子どもたちと一緒に体験し15年以上継続しておる先生もおられます。
ダルクローズリトミックの大事なポイントである、「子ども自身が感じる・イメージする」「自分で自分の表現をする」「お友達の中で自分の役割を知る」という理念を日ごろの保育にも生かし、保育者も子ども達も音楽を身近に感じて和やかで明るい保育園です。
(先生方の子ども達への接し方が、素晴らしい! 子ども一人一人を愛おしみ丁寧に接しておられます。)

音楽会や発表会の内容も充実しています。

 

コロナ禍以前、年に1~2回先生方へのリトミックと指導の展開について8時間程度の研修を実施、月に一回の子ども達への指導日には、レッスン内容の定着を目的として、次回指導日までの保育内での展開法の研修を継続してきました。

年齢ごとのカリキュラムはほぼ決まっていますが、その年ごとのクラスメンバーや雰囲気に応じて、活動内容を変化させていきます。常に新たな指導案で進めてきたので、先生方も表面的な指導手順だけでなく、その奥にある指導目的への理解も深まってきています。

 

そんな中でふいに訪れたコロナ禍・・・リトミックをどうやって継続していこう…?
園長先生と相談しながら、リモートでの実施が始まりました。

 

  1. 私が指導案を作成し活動内容に沿った音源の録音(一つの活動に対して5通りくらいのパターンを用意)を準備する。
  2. その実施方法と留意点を先生方にリモートミーティングで伝える。
  3. 保育内で一定期間の実施後、子ども達の様子をDVDで送っていただき、次の指導案を考案する。

この様な流れで、子ども達の経験を絶やさず、年齢に応じた課題に触れてもらうことを目標としました。

 

クラス担任の先生がたの適切な模範と声かけにより、子ども達の自発性を優先しながら、生の音楽ではないものの、子ども達の「聴きとる力」「行動を選択する力」「表現を共有する社会性の育ち」などの成長に、役立ったと思います。

 

クリスマス音楽会や年度末の発表会も、リモートミーティングにより試行錯誤しながら進めました。

年度末の発表会で、どの子も自分の役を精一杯表現している姿を(後日DVDで)見せてもらい、とても嬉しく感じました。

 

子どもたちに丁寧にかかわっていくということ・・・保育園という現場では、一人一人の発達の違いへの配慮は欠かせません。発達障がいのある子ども達の成長の様子も、リトミックを通して継続して見ていくことが出来ます。

リトミックによる感覚の刺激は、細やかな経験の積み重ねを子ども自身が実感することに繋がっています。遊んでいるかのように学び、人との関わりをポジティブにしていくことができています。
前回の発表会(DVD)では、「長いセリフを覚える」「姿勢正しく立ち、大きな声でゆっくりと活舌良く話す」「自分の出番のタイミングを逃さない」などの目標への到達が危ぶまれた子達が、見事に自分の力でクリヤしていました。一年前は寝転んでいたかと思ったら大きなうさぎ跳びジャンプしかやらなかった子が、四肢のコントロールも良くなって、音楽に合わせて先頭でステップしているなどの成長の様子もありました。

「リトミックが役立っているね!」と先生方と一緒に喜びました。

 

先生方には感染対策の業務が付加されて大変な中にも、“リトミックを通して子ども達の成長を願う”奮闘をいただき、今年度も今のところ同スタイルで進めています。

 

さて、「リモートで何ができる?」を考えることは、コロナ禍で得た大きな経験です。

「伝える」ことが苦手な私にとって、考えることがたくさんあります。

これまで対面でやることが当たり前で、その「当たり前」が出来なくなり始めて、反対に対面でやっていたことは何だったのか?を自問自答したことが、客観的に見つめなおす良い機会になりました。

さらに精進していこうと思います。