子育てと、絵本と、音楽と

2歳児クラス・リトミックレッスンでの一コマ。

―右手と右手で握手して、二人でクルクル回ってみましょう!音楽が止まったら反対の手(左手)に替えて、今度は反対周りにクルクル回ってみましょう!―

ママと一緒にやっていた男の子は、楽しいやら嬉しいやらでぶら下がり状態で自分の足で歩くのを忘れています。 そこで、「○○くん、ママだから引っ張ってもらえるけど、お友達と一緒だったらお友達が転んじゃうよ!ちゃんと音楽に合わせて歩こうね。」と声をかけると、ハッとした表情で、次にはとても上手く音楽に合わせて歩幅や速さをコントロールすることが出来ました。

実は、一年前の彼は、「○○しましょう!」ということに人一倍興味を示さず、マイペースにやりたいことだけ参加、もしくはエスケープ、と“みんなと一緒”が苦手なお子さんでした。

そこで、お母さまに、「今は、彼の『こうしたい!』という気持ちを大切にして、寄り添ってあげてね。」と声をかけ、童話館ぶっくくらぶのパンフレットをお渡しさせていただいていました。

言葉の意味する奥にあるもの、それを感じ取れるようになるには、小さな子どもにとってはやはりお母さんとの気持ちの通じ合いが何より必要な経験であり、絵本の読み聞かせによる子どもとお母さんの心の通い合いが、どれ程の成長の糧になるかは言うに及びません。

ここ数か月のレッスンの中で、「ゴーヤもオクラもほかにもたくさんお野菜がお父さんの畑にあったよ。」などと、肌で感じたいろいろな体験から理解力が伸びたな~と、思っていましたが、このように「こうしたら、お友達がどうなる?」と一瞬に他者の気持ちや状況を想像することができるようになったということに、絵本に興味を持ちバーチャルな実体験も豊かに持てたことで育つ「心」の成長を感じました。

彼は電車が大好きで、新幹線は何々系まで、特急列車も形や色の違いでほとんど覚えてしまっているほど。 そこで、レッスンで電車ネタでいろんな活動をしようと「はしれ、かもつたちのぎょうれつ」という本を読んであげようと思っていましたが、既にその本をお家で何度も読んでもらっていたそうで、すっかり丸暗記しておられました。

「じゃあ、○○くん、先生に読んで聞かせて」とお願いすると、彼は本当に上手に読み上げてくれて(勿論文字はまだ全く読めませんが)、絵本を通し彼の世界が大きく広がり深まったことを嬉しく思います。

子どもの集中力は、親の膝の上で育つと、私は思っています

良質な絵本にふれる機会を持つことは、心の財産になります

私自身の子育てにおいても、絵本をたくさん読み聞かせるとこができたことは、子どもたちのみならず、私自身にとっても子どもの視線で感じ考え、子どもの気持ちを理解していくことに繋がり、本との出会いに感謝しています

また、本を読み、思考の基となる言葉にしっかりと触れておくことは、何を学んでいくうえでも大切。

そんなこともあって、ピアノのレッスンでもリトミックのレッスンでも、「本を読んでね!」と、度々お話ししています。

レッスンの中で本を使う時には、音楽のように慣れ親しむことが出来るように、言葉のリズム感の良いもの、素敵なオノマトペが載っているもの、情景から音楽が感じ取れるもの、本のストーリーの流れ自体が音楽的なもの、その時々のレッスンの目的に応じた絵本を選びます。

音楽を理解していくにも言葉はとても重要。

音楽は言葉を超え直接人の心の奥底に訴えかけてくるものではあるけれど、それを語り合い、共感し合い、伝えていくためには言葉が必要。

音楽家にとっても、音のイメージは言葉で語られ、音楽を表現する語彙力は必須。反対に言葉がなければ、イマジネーションも枯れてしまうのではないでしょうか?

最後に、1998年にIBBY(国際児童図書評議会)が主催した子供の本を通しての平和を考える世界大会で、美智子さまがビデオテープによりおこなった基調講演の中のお言葉を紹介させていただこうと思います。

子供達が,自分の中に,しっかりとした根を持つために
子供達が,喜びと想像の強い翼を持つために
子供達が,痛みを伴う愛を知るために

そして,子供達が人生の複雑さに耐え,それぞれに与えられた人生を受け入れて生き, やがて一人一人,私共全てのふるさとであるこの地球で,平和の道具となっていくために。

(宮内庁HPより:第26回IBBYニューデリー大会(1998年)における皇后陛下の基調講演

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この度、『童話館ぶっくくらぶ』さまと当HPを相互リンクさせていただけることになりました。

よろしくお願い致します。

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