楽譜の向こうに広がる世界—音楽が育む生きる力

最近、ひょんなことから「メダリスト」という漫画を知りました。
これは、小学5年生の女の子がフィギュアスケートのメダリストを目指して奮闘するスポーツ漫画です。主人公のひたむきな向上心や、彼女を支えるコーチの温かい人柄にすっかり魅了されました。

フィギュアスケートは個人競技ですが、その努力や成長の過程は、ピアノを学ぶ生徒たちとも共通する部分が多いなと感じました。
例えば、子どもたちは普段の生活ではお互いの努力をあまり見せ合わないものです。「能ある鷹は爪を隠す」というように、自分が頑張っている姿をわざわざ人前で見せることは少ないですよね。大人が環境を整えてあげないと、「みんなもできていないんだから、自分もできなくていいや…」という雰囲気になってしまうこともあります。

そこで、子どもたちには「目指すものを持ち、日々努力を積み重ねることの大切さ」を知ってもらいたいと思い、グループレッスンで話をしました。

まず、 ① 目標を設定する ② 計画を立てる ③ 計画を実行する
この3ステップの重要性を、具体的に教則本を進める流れに置き換えて説明しました。これはピアノだけでなく、勉強や他の習い事でも大切な力です。特に③の「実践力」は、もう少し意識して伸ばしていけるといいなと思っています。

次に、自主的に練習を進めるために欠かせない3つのポイントについても話しました。

① 音を正確に読む ② リズムを正しく捉える ③ 指番号を意識する
この3点を自分でしっかり押さえて練習することで、今のレッスン内容をさらにレベルアップさせることができます。せっかく頑張っている「楽典」の知識も、もっと活かしていこう!と伝えました。

そして最後に、「音楽を学ぶことは、社会性を育むことにつながる」という話もしました。

音楽はコミュニケーションの手段であり、言葉が通じなくても心を通わせることができます。それには、「自分だけがうまくできればいい」というものではなく、他者への思いやりや、コミュニティの中で自分の責任を果たすことも大切になってきます。リトミックの動きのアンサンブルやピアノの連弾をするときも、常に「思いやり」と「責任感」を忘れずに取り組んでほしい。そんな話をしました。

驚いたのは、この「社会性」の話をしたときに、子どもたちの反応が一番良かったことです。
話をするうちに、空気がピンと張り詰め、みんなの表情が引き締まりました。「この話が一番印象に残った?」と聞くと、全員がうなずいていました。
私自身、「えっ?!そこ?!」と驚きましたが、それだけ響くものがあったのかもしれません。
この話が子どもたちの心にどんな風に残ったのか、これから一人ひとりに聞いていくのが楽しみです。