仕事の公益性を考える

「音楽の世界は狭いから・・・」

私が学生時代から、誰ともなく周りの人たちから社会人になっていく事へのアドバイスの中にあった言葉。

「何のためにピアノをしていくのか」 「社会に役立つとはどういうことなのか」

おかげで、この歳になるまでどちらかというと音楽にどっぷりという感覚ではなく、社会的なことにもアンテナを張っていようと、やってきたつもりはあるが・・・

音楽の世界の視点からではなく、外の世界の視点から音楽の世界を眺めて、自分のやっていること、やっていけることを改めて考えてみることも必要だな・・・最近、また痛感している。

ということで昨日、地域ビジネス創出支援交流事業/
「今、生き方を考える ~新しい時代に向けて~」というセミナーを受講した。

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税理士、NPO代表、工務店主の若い起業家の方々のプルーフには、今の時代の働き方が集約されているようで、非常に興味深かった。

一昔前は、会社の為、組織の為に自分を殺して(?)働くのが「仕事」だったように思う。

しかし、今はダイレクトに「自分を活かして相手の為に働く」という感覚。

経営者であるこの3名の方は、時代を読み、これから必要になるものを探り、仕事そのものを創出しながら、オリジナリティの有る道を進んでおられる。

そこに共通するのは、自分の仕事への熱い想いを持ちながらも、公益性・公共性を客観的にはかるクールな視線。
人を大切に win-loseにならないようにwin-winな結果を生む選択をしていく、余裕を持つ大切さ、公私の充実、外との交流を心掛ける、など、しっかりとした人生観を持っていることにも感心させられた。

個人教室の主宰も、謂わば「事業主」ではあるが、趣味との線引はどこか、仕事の社会的価値をどのように判断すればよいのか、謎も多い。

昨日もその場に座っていながら「音楽」というものの価値をこの方々はどう考えられるだろう・・・?と考えていた。

「新しい時代の生き方と働き方を考える」参加者同士のワークショップでは、人口減少と右肩下がりの経済情勢を表す2つのグラフを元に、各々が現代という時代、「これまで」と「これから」の働き方の違いを直感的に考え、グループで話し合い、出てきたキーワードを発表し合った。

「楽しむ」「相互作用と自助努力」「内面を大切に」「調和」「国際化と教育改革」「グローバル」といったキーワードが出てきていた。

童心に帰ってグループ発表!という感覚ではあったと思うが、それもまた経験。

その後の白井文氏の講演は、氏の略歴と、尼崎市長在任中の未曾有の大きな脱線事故の事故対策本部長という前例(もなければ今後もあってはなら)ないポストを経ながら考えられたことなど、パーソナリティ溢れる内容だった。

「あなたなら、どう判断しますか?どう決断し、どう指示を出しますか?」

この問いかけは、強烈なインパクトだった。

私は、白井氏が市長だったころ市民としてその仕事振りを少し身近に感じていたので、「あれだけ叩かれながら、アウェイな中でよく頑張っておられるな~」と拝察していた。

やはり、相当な内面の葛藤と、心身ともに地獄のような苦しみを味わっておられたのだと聞かせていただいた。

「努力すれば報われる、そう思って努力に努力を重ねました。でも私の場合その努力は報われなかった。」

そう言い切っておられたのは、本当に正直なことと、そう言い切られる潔さにも心打たれた。

「でも、少し自分が変わることが出来たと思う。」(ん~、凡人の私にはもう何も言えないな~・・・)

「たった一人でも、あきらめないでやり抜いてください」

と、最後を締めくくっておられた。

多くの方が、盛大な拍手を送っていた。

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私ごとながら、先日も「ピアノ講師の為の教室経営セミナー」で講師の先生に「先生はそれを貫かれないとだめですよ」とのお言葉をいただいた。

「音楽」が人に与える影響は多大なもので、人間にとってなくてはならないものとの認知はされている。

が、公教育からはどんどん時間が削られ、その割に内容はとても専門的で学問的になってきているようだ。

これはあまり良いこととは言えない。足し算引き算が出来ないままに因数分解を教えられてもちんぷんかんぷんなのと同じ。

「音楽」は、実は中世の時代には「数学」 「天文学」 「神学」 「音楽」と4大科目の一つとして大学で教えられていた。

このラインナップから学問的にどのようなベクトルを持つものかは察せられるだろう。

が、現代において教科としての「音楽」は虐げられてしまっている。  その理由は誰もがわかっている。

「音楽」を教えること、自身の音楽力の研鑽のみならず、ビジネスとしてのハード面からのアプローチを含め、今後も多くの方々との交流の中で考えていきたいと思う。

2013-06-30