「ピアノを弾く」って大変なのだ・・・

IMG_1081花大人の脳になってからピアノを弾き始めることの難しさ。

なぜ大人になってからではピアノを弾くことが複雑怪奇な行為になってしまうのかについて、最近の脳科学の研究の成果によって明らかにされつつある。

・一般の人には大変と感じられる動きでも、ピアニストにとってはそれほどたくさんの神経細胞を働かせなくても可能な動きである。ピアニストの手指を動かす神経細胞は、長年の練習によって、複雑な動きを生み出しやすいように特殊な変化を遂げる。

※参考文献:古屋晋一著「ピアニストの脳を科学する」超絶技巧のメカニズム 春秋社

楽譜を読む、音の高さ(名前)を把握する、リズムを読み取る、読んで歌ってみる=音の流れ(音楽)として楽譜を変換する。鍵盤上の音の位置を判別する、音のつながりから弾く鍵盤の順序を視覚的に追う、そこから5本の指の中で使うべき指を選択し、脳から電気信号を送りふさわしい指の筋肉をコントロールし適切な力で鍵盤を弾いていく。最初に音の名前を読み取るには、ドレミファソラシドレミ・・・・(ドの一つ上はレで、一つ下はシといった)という音の並びを知っておかなければ、そこで躓いてしまう。こうしてたった一つの音を弾くだけでも、ざっと10を超える段階がある。

これは、慣れた人にとっては一瞬のうちにほぼ無意識状態でもやってしまえることなのだけれど、初心者にとっては、本当に一つずつの段階を追ってやっていくしかない。このプロセスの中で、いくつかは省略しても表面的には何とか弾けているように映る。例えば、音の名前をちゃんと把握しなくても、響きと鍵盤の位置だけ覚えて押さえれば弾けているということにもなる。しかし、手抜きをして小脳だけで弾けるようになったとしても、時間がたてばきれいさっぱりすべて忘れてしまうし、いつもと違うプレッシャーがかかった状況になったりした時には、頭が真っ白になってしまうものである。

子どもの脳は「柔らかい」という表現をよくするが、何かを習得する時、脳内の様々な部分をつなぐネットワークが瞬時に高速通信するのだろう。わかりやすく説明をし、順序良く手ほどきをしてあげれば、ほとんどの子が自分で歌える程度の曲なら苦もなく、あっという間に鍵盤楽器で演奏できるようになる。文字も読めるようになり、5本の指が独立して動くようになった頃に、ピアノを弾くという経験をしておくと、大人になってピアノを弾きたくなった時に絶対に役立つと思う。だから、ピアノは子どものうちにぜひとも習わせてあげてほしい。

もちろん、大人になってからでも、耳の良い人、指を動かす能力にたけている人、道理を理解することの速い人、それぞれの特性をいち早く汲み取って、その人に合わせたレッスンをしていけば、音楽を楽しめるようになる。一人の人にも進度には波があって、一度に上達を感じれるときもあれば、何度やっても習得できないこともあるけれど。

「ピアノを弾く」ということの複雑さ。ミクロ単位の世界だなと思う。

だから、教える方もずっと勉強が続く・・・